電磁波シールド材の性能を最も発揮させる対策方法を検証しました。テスト用の電磁波シールド材には柔軟性があり、被せた状態でも透視性に優れているということでメッシュ状の生地の電磁波シールドメッシュを採用しました。電磁波測定器は最新型のトリフィールドメーターTF2を使用。敷く、被せる、垂らす、包む等、最も効率的に電磁波をシールドする対策方法とは。
電磁波シールドメッシュとは
電磁波シールドメッシュとは携帯電話やスマートフォンやWi-Fi等の電波や電子レンジやパソコン等の事務機器から発生する高周波(数MHz~数GHz)電磁波をシールドする素材です。銀(Ag)をめっきした糸をメッシュ状に編み上げており、繊維がもつ「軽量、柔軟、フレキシブル性」と、金属がもつ「導電性、電磁波シールド性」等の特性を併せ持っています。
使用する電磁波測定器について
2018年に新発売となった「トリフィールドメーターTF2」を使って測定します。
低周波の電界、磁界から高周波まで広域周波数の電磁波測定が可能です。今回は電子レンジから出るマイクロ波を測定しますので測定モードの切り替えはRF(Radio Frequency)に設定して測定します。
関連ページ:NEWトリフィールドメーターTF2のレビュー
電磁波発生源
安定した電磁波を得るために電子レンジを利用します。電子レンジは周波数2.45GHzの電磁波を照射して水分子を振動させてその摩擦熱で加熱しています。以前に実施した電子レンジの漏洩電磁波の測定試験で、前面からの電磁波が一番多く漏れていることが分かっているので前面から15cm程離れた位置に電磁波測定器を置いて測定していきます。
関連ページ:電子レンジの漏洩電磁波の測定結果から危険な位置が判明
パターン別シールド性能試験
それでは実際に電子レンジを作動させて、電磁波シールド材を「敷く」、「被せる」、「垂らす」、「包む」さらに「アースを取る」の各パターンにて測定していきましょう。
マイクロ波の強度は通常目まぐるしく変わるので、電子レンジを500Wで加熱している状態でそれぞれのパターン別毎に10枚の写真を撮影して、一番高い数値が出た写真を採用しました。
まずは何も無い状態です。青丸で囲んだ数値は実際に撮影した瞬間の数値です。赤丸で囲んだ数値は測定時のピーク値(最大値)を表示します。しかしながら下の写真ではピーク値が測定可能最大レンジの19.999mw/m2を越えてしまっているのでエラー表示になっています。それほど強力なマイクロ波が漏洩しているということです。(写真をクリックすると大きい写真にリンクします)
敷く
シールドメッシュの上に電磁波測定器を置いて確認してみましょう。実はこれ、携帯電話の裏側に電磁波をシールド材を使ったシールなどを貼って「電磁波を吸収します」とか言ってる商品と同じようなスタイルになります。これで減衰しないと携帯電話やスマホの裏側に電磁波シールド材を貼っても意味が無いと言うことになります。
はい、ご覧のとおり全く効果はありません。シールド材を下に敷いても電磁波を吸収するなんて有り得ません。
被せる
次に電磁波測定器にシールドメッシュを被せてみましょう。測定器の裏側が開いている状態になります。床はフローリングで電磁波測定器を乗せてる台は発泡スチロールなのでいずれも電磁波は通過します。結果は写真のとおり、敷く場合とほとんど同じでした。
垂らす
次に電子レンジとシールドメッシュの間にカーテンのように垂らしてみましょう。これは電磁波シールドの生地をカーテンとして使用した際にどれくらい減衰するかの参考になると思います。
電磁波は回折現象といってシールド材の裏側に回り込みます。したがって、面積が大きければ大きいほど効果はあがるはずですが、今回は縦横1m程度のシールドメッシュを垂らしてみます。
2.554mW/m2 ピーク値:15.884W/m2とやっと減衰が確認できました。下に敷いたり上に被せたりする場合と違い、カーテンのように垂らすことによってシールド効果があることが分かりました。
包む
次に測定器を電磁波シールドメッシュで包み込んで、隙間の無い状態にしてみます。
0.431mW/m2 ピーク値:2.138W/m2とカーテンのように垂らした場合に比べるても大幅に減衰しました。これは電磁波シールドの基本で、隙間の無い状態にすることによりシールド材の効果を最大限に発揮することができます。さらに言えば2重、3重と重ねることによりさらにシールド性能は大幅に向上します。
アースを取る
最後にさらにアースを取ることでさらに減衰させることが出来るのかを見てみます。下の写真のようにワニ口クリップで電磁波シールドメッシュを挟んでアースした状態でさらに数値を下げることが可能なのかを調べてみます。
下の写真のとおりアースをとっても、結果はほどんど変わりませんでした。高周波のマイクロ波はシールド材によってほとんどが反射されるのでアースをとる必要は無さそうです。低周波の電界を逃がすには効果はありますが、高周波のシールドにはアースは必要無さそうです。
まとめ
以上で今回の電磁波シールド材の電磁波遮蔽試験を終了します。電磁波シールド材はシールド性能もさることながら、対策方法がいかに重要であるかをお分かり頂けたと思います。シールド材を下に敷いたり、上に被せたりしてもほとんど効果はありませんでした。要するに、携帯電話やスマートフォンの一部にシールのように貼ったりするような商品は無意味ということです。
電磁波をシールドしたい対象が物であれ、人であれ、なるべく隙間の無いように包み込んだ状態を再現することが重要となります。カーテンのように電磁波発生源との間にシールド材を垂らすことによってある程度は減衰することは確認できましたが、これは電磁波測定器よりもはるかに大きな面積を間に垂らしたためで、小さなサイズで間に垂らしてもあまり効果は無いものと思われます。今回の試験結果をまとめると以下のようになります。
対策方法 | 効果の有無 | 備考 |
---|---|---|
敷く | 効果なし | |
被せる | 効果なし | |
垂らす | ある程度の効果はある | シールド対象物よりも相当大きい面積が必要 |
包む | 非常に有効 | |
さらにアースを取る | さらなる効果は認められず | 低周波の電界除去には有効 |
今回の試験に使用した電磁波測定器トリフィールドメーターTF2の紹介
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