導電塗料の電磁波シールド性能の実力を検証しました

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導電塗料とは金属の微粉末を溶剤に溶かした塗料で、塗布した面には電気が流れるようになります。塗装するだけで金属で皮膜したような状態になるので高周波電磁波をシールドすることが可能になります。
用いられる金属粉は銀や銅やニッケルなどがありますが、今回は予算の都合で比較的安価なカーボンブラックの微粉末を溶かした塗料のドータイトXC-12という導電塗料で電磁波シールドの実力を検証したいと思います。

カーボンブラックは銅やニッケルなどと比べて抵抗値が高く、導電性能も落ちるので、電磁波シールド効果も落ちますが安価なのでお気軽に実験することが出来ます。

実験の概要

ポリプロピレンの容器に導電塗料を塗布します。
電磁波測定器がジャストフィットするサイズの容器を100均で見つけました。
この容器の中に電磁波測定器を入れて導電塗料の塗布前と塗布後でどれぐらい電磁波を遮断するのかを調べます。

高周波電磁波は隙間があれば入ってくるので、出来るだけ密閉度を保持するためにカメラのレンズのサイズの穴だけを開けて全体に塗布します。

電磁波発生源として電子レンジを使用します。
こんな感じで電子レンジの前面に置いて、塗装前と塗装後を比較してみます。

使用する電磁波測定器について

トリフィールドメーターTF2

今回は高周波の測定となりますので、電磁波測定器のレンジはRFに合わせます。
RFとはRadio Frequency の略で直訳するとラジオ波となりますが、主に通信電波に使われる高周波になります。この測定器の高周波は20MHz~6GHzの高周波が測定可能で、電子レンジからの電磁波は2.45GHzなのでRFに合わせます。

<関連ページ>

電磁波測定器トリフィールドメーターTF2の詳細

NEWトリフィールドメーターTF2のレビュー

導電塗料について

ドータイトXC-12

導電性能を出すためにカーボンブラックの微粉末を溶かした塗料です。導電塗料には銀や銅やニッケルの微粉末を使っているものがあります。
銀は最も高性能ですが、高価な金属なので価格も非常に高くなります。一般的には銅やニッケルを使った導電塗料が多いのですが、今回は1回だけの実験なので低価格のカーボンでご勘弁ください。
とはいえ、十分な導電性能はあるのでノイズ対策やリモンコンの修理や静電気対策や電磁波シールド対策にも使うことができます。
カーボンの微粉末が底に沈殿していますので、十分に撹拌してから使用します。
ドータイトXC-12とSP-2シンナー

塗装開始

それでは容器に塗装していきましょう。筆塗りでも良かったですが、プラモデル用のエアブラシを持っていたので、たまには使ってみようと思い押し入れから引っ張り出しました。
繊細なエアブラシではカーボンの微粉末が詰まる恐れがあると思ったので、専用シンナーで十分に希釈しました。
粘度を確認しながら適当に薄めていったので、希釈率ははっきりしませんが、半分ぐらいは希釈したと思います。

塗料カップが小さいので4~5回塗料を充填しました。
広範囲に塗布する場合は業務用のエアガンが必要になります。

塗装完了です。
フタも塗りましたが、フタの材質はポリエチレンの軟質素材なので乾燥後に曲げるとボロボロと剥がれてきました。
やはり、ゴムや塩ビ等の軟質な素材は剥がれます。容器自体は硬質なポリプロピレン(PP製)なので大丈夫です。

塗装後の抵抗値は?

実験前に導通テストと抵抗値チェックしてみましょう。
1cmでの抵抗値は44.1kΩ 、5cmで11.51MΩ と結構な抵抗値になってしまいました。
原因は希釈しすぎたことと重ね塗りしなかったことと思われます。
やはり、銀や銅やニッケルの導電塗料と比べるとかなり抵抗値は高くなるようです。

実験開始

おまたせしました。それでは電磁波シールドの実験を開始します。

塗装前

塗装前の測定写真です。
トリフィールドメーターTF2の高周波最大レンジは19.999mW/m2 となります。赤丸のピーク値は測定可能レンジを超えてしまってエラー表示になっています。青丸の瞬時値は撮影した瞬間で10.430mW/m2 が表示されています。

塗装後

塗装後の中は真っ暗ですが、測定器にはバックライトが搭載されていますのでカメラ穴から写真撮影することが出来ました。
ピーク値は11.635mW/m2 、瞬時値は2.421mW/m2です。

結果発表

確かに電磁波シールド性能は確認出来ましたが、期待したほどでは無かったというのが正直な感想です。
恐らく、エアブラシで吹くために希釈し過ぎたことと、重ね塗りをサボってしまったことが理由と思われます。
今回の実験で使ったこの容器はこのまま保管しておいて、次回は筆で重ね塗りして再挑戦したいと思いますので第2弾をご期待ください。

  ピーク値 瞬時値(撮影した瞬間)
塗装前 測定不能
19.999mW/m2以上
10.430mW/m2
塗装後 11.635mW/m2 2.421mW/m2

まとめ

今回使用したXC-12は導電塗料で有名な藤倉化成の商品ですが、実は用途としては電磁波シールドのカテゴリーではなく静電シールドのカテゴリーに該当します。使用目的も帯電防止、静電気防止、ノイズ対策、電磁波シールド、不導体物の導体化で、電磁波シールドを主な目的にする場合はやはり下の表の上3つのフィラーに銀や銅やニッケルを用いたものが良いようです。ちなみにカタログの導電性能は以下のようになっています。

ドータイト品名 フィラー 導電性(Ω・cm)
XA-9015 Ag(銀) 10-5
FE-107 Ag-Cu(銀-銅) 10-4
FN-101 Ni(ニッケル) 10-3
XC-12
(今回使用した物)
C(カーボン) 10-2

カーボンの導電塗料の魅力は何と言ってもコスト面でのメリットです。導電性は他の金属フィラーと比べて劣るものの電気の通らない素材(プラスチックや木材等)に塗布することによって電気が流れるようになりますので、リモコンの修理やギター・スピーカー・音響機器のノイズ対策には最適だと思います。特に趣味でエレキギターを演奏される方たちの間ではノイズ対策として結構有名です。

電気を通すだけなら塗布するだけで簡単なのですが、電磁波をシールドするとなると対策方法が大きく影響しますので今回のように容器全体に塗布して、出来るだけ電磁波の入り込みを防ぐ工夫が必要になってきます。
次回は筆塗りで膜厚を厚くして導電性能を上げて再挑戦したいと思います。

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