電磁波用語解説

電磁波電界(電場)磁界(磁場)極低周波マイクロ波疫学調査・実験研究SAREMCEMIEMS電離放射線非電離放射線ガウス・テスラWHOホットスポット効果電磁波過敏症国際非電離放射線防護委員会スチュアート報告誘導電流周波数割当計画第5世代移動通信システム(5G)VCCI協会

電磁波
電界と磁界が互いに垂直な方向に振動しながら空間や物質中を伝わっていく現象またはその振動電磁界。 電磁波には、大きく分けて、高周波と低周波があります。携帯電話、電子レンジ、レーダー、TV電波などが前者であり、50/60Hzの家電機器や送電線から放出される極低周波や電磁調理器などからの低周波が後者です。なお、電磁波の単位は、電場(V/m)や磁場(GまたはmG)が使用されます。

電界(電場)
身近なところでは、プラスチックの下敷きをセーターなどでこすって頭に近づけると髪の毛が逆立つのは、静電気によって生じる「電界」によるものです。通常(+)と(−)の電気があると、この間に電圧が生じて「電界」ができます。 セーターなどを脱いだ時、パチパチと音がしたり、ドアのノブに触れた際にパチとすることがありますが、これも静電気による「電界」によって生じる現象です。 「電界」は、「電圧」がかかっているもののまわりに必ず発生します。 電化製品の場合は電源プラグが抜けている状態では何もありませんが、コンセントに差し込むとコードには「電圧」がかかり、その回りに「電界」が発生します。 「電界」の単位はキロボルト・パー・メートル(kV/m) またはボルト・パー・センチメートル(V/cm)です。

磁界(磁場)
磁石の近くに砂鉄をまくと、N極とS極の間を結ぶ幾つかの筋ができます。これは、「磁界」の働きによるものです。 「磁界」は、磁石のまわりだけでなく、「電流」が流れているもののまわりに必ず発生します。 「磁界」の単位はガウス(G)またはテスラ(T)です。 10ガウス=1mT(ミリテスラ)

極低周波
送電線や家庭用電化製品から出る低い周波数の電磁波(50Hz、60Hz)のこと。極低周波の電磁波は非常に低い周波数であるため電界と磁界とに分けて考えます。周波数50〜60Hzというのは波長は5,000〜6,000キロメートルにもなるため、第一波が形成されるころには日本本土を飛び出してしていることになります。従って電磁波というより正しくは電磁界と言います。 詳しくは電磁波の種類と特徴をご覧ください。

マイクロ波
携帯電話や電子レンジから出ている高周波電磁波。 携帯電話は800MHz帯〜2GHz帯。電子レンジは2.45GHz帯(波長約12cm)を利用している。上記の極低周波と違い電界と磁界とは絡み合って出てきます。電磁波の伝わる方向に対して垂直な単位断面積当たりの通過電力(単位:mW/cm2等)で考えます。詳しくは電磁波の種類と特徴をご覧ください。

疫学調査・実験研究
病気の原因と思われる環境因子を設定し、その因子が病気を引起こす可能性を調べる統計的調査。 疫学調査でよく知られた例としては,喫煙と肺ガンの関係があります。タバコを吸う集団の肺ガンの発生率と吸わない集団の発生率を比較して,喫煙量に対する危険の度合いを調査します。この危険の度合いは,相対危険比と呼ばれ「ある環境因子により病気の発生率が何倍になるか」を示しています。 疫学調査に対して、動物や細胞に実際に電磁波をあてて、その影響や因果関係、メカニズムを確認することを実験研究と言います。 電磁波を人体に照射して人体への影響について調べるわけにはいかないので電磁波の調査研究は疫学調査かラット、うさぎ、モルモット等の小動物への実験調査となります。

SAR
比吸収率(Specific Absorption Rate)の略で、ある一瞬時に対象となる組織(たとえば脳細胞)を電磁波が通過することにより発生した熱の量を計測することから始まる。もう少し簡単に言うと、単位質量の組織に単位時間に吸収されるエネルギー量のこと。この値から、人体がある電波を発する機械から、一定の時間でどのくらいのエネルギーを受けるのかがわかります。 携帯電話等、小型無線機の場合は局所SARと言って、人体が電波にさらされることによって、任意の10g当たりの組織に6分間に吸収されるエネルギー量の平均値のことで、W/kgの単位で表されます。

EMC(Electro Magnetic Compatibility)
電磁両立性, 電磁環境両立性。ある機器が動作することによって他の機器の動作を阻害したり、人体に影響を与える一定レベル以上の干渉源となる電磁妨害(EMI)を生じないこと。電気機器は、何の対策も施さなければ、近くにある他の機器の放射電磁波や、雷、太陽活動などの影響で、機能低下や誤作動、停止、記録の消失などの影響を受けることがある。また、自身の発する電磁波によって、他の機器の動作や近くにいる人間の健康に悪影響を与えてしまうこともある。

EMI(Electro Magnetic Interference)
電磁妨害、或いは電磁干渉と訳されます。不要な電磁波によって他の機器に影響を与え、希望する電磁気信号に障害が起こること。

EMS( Electro Magnetic Susceptibility )
電磁感受性。電気機器は、何の対策も施さなければ、近くにある他の機器の放射電磁波や、雷、太陽活動などの影響で、機能低下や誤作動、停止、記録の消失などの影響を受けることが多いことから、多少のEMIを受けても阻害を受けない感受性の高さ。

電離放射線
狭い意味での"放射線"のこと。波長が短く(エネルギーが大きい)、原子に付属している電子を引き離す能力(電離作用)を持っています。電磁波ではエックス線やガンマ線などが電離放射線です。 電離放射線の被曝量が多ければ生体に深刻な影響を与える(白血病やガン等の発生確率が増加する)ことが一般に知られています。

非電離放射線
光や電波など比較的波長が長い(比較的エネルギーが小さい)もの。先に述べた波長の短い放射線にくらべてエネルギーが小さいので、原子にぶつかっても電子を引き離す能力(電離作用)はありません。太陽光線や電気など、わたしたちにとって身近な存在です。 光(遠赤外線、赤外線、可視光線、紫外線の一部)、放送用電波、交流電源/電線/電化製品から発生する電磁波、マイクロ波(電子レンジや携帯電話)などが非電離放射線です。(ただし、紫外線は非電離放射線と電離放射線の境界に位置します。周波数の高い一部の紫外線は電離能力を持ち、生体組織を破壊します)。

ガウス・テスラ
1平方センチあたりの磁束密度の国際単位で、磁力の強さを表します。ちなみに現在はミリテスラ(mT)が主流です。1テスラは1万ガウス。地球の地磁気が0.5ガウス、掲示板などに使われる磁石が数百ガウス、大手健康機器メーカーの肩こりを取る人気商品が800〜1,800ガウスとなります。10ガウス=1mT(ミリテスラ) 平成9年から磁気の国際単位はテスラに変更されています(1ガウス=0.1ミリテスラ

WHO(世界保健機構)
WHO(World Health Organization)とは国際連合の中の専門機関の一つで1948年に設立。国際保健事業の調整・援助、伝染病や風土病の撲滅、保健関連条約の提案・勧告、医療・衛生等の国際基準の策定といった幅広い任務を受け持つ機関。電磁波問題については下記の基準を発表している。
  環境保健基準第35巻(1984年) 10kV/m以下の電界では、立ち入りを制限する必要はない。
  環境保健基準第69巻(1987年) 50G以下の磁界では、有害な生物学的影響は認められない。
5G以下の磁界では、いかなる生物学的影響も認められない。

現在、WHO(世界保健機構)の関連機関である国際ガン研究機関(IARC)の呼びかけで、脳腫瘍と携帯電話の関係を探る国際的な疫学調査が進んでいる。携帯電話の研究では、これが人体を対象にした初の長期的な調査になる。研究結果が出るのは、2004年頃の予定。
WHOホームページ http://www.who.int/en/

ホットスポット効果
ある一定の大きさのボール状の物体に電磁波を浴びせると、その中心に電磁波が集まり、熱を発生させるというもの。この報告が衝撃的だったのは、そのある一定の大きさが、直径20cm、人間の頭の大きさとほぼ一致していたことにある。 電子レンジで食物を加熱したとき、中心部が特に熱くなることがあります。これもマイクロ波によるホットスポット効果と言えるでしょう。

電磁波過敏症
日本では、まだ認知されていない病気ですが、「電磁波過敏症」と呼ばれる症状があります。 電磁波に過敏なため、身の回りにある微弱な電磁波を浴びただけでも、頭痛や吐き気を感じてしまう人々がいます。 電磁波過敏症は、アメリカの医学者ウィリアム・レイ博士によって命名されました。 博士によると、電磁波過敏症の患者の特徴は、最初に目、皮膚、神経に症状が現れます。そして次に呼吸困難や動悸、めまいや吐き気などの症状が現れてきます。また、疲労感やうつを伴う頭痛や短期的な記憶喪失、手足のしびれやまひが起こってくる人もいます。

国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)
放射線防護活動の国際的交流を目的として設立された国際放射線防護学会(IRPA)が、非電離放射線に関する新しい独立専門組織として1992年に設立。様々な種類の非電離放射線に関連する可能性の考えられる生物影響を調査し、非電離放射線曝露限度に関する国際指針を作成し、非電離放射線のあらゆる問題を扱うために活動。

スチュアート報告
2000年5月にイギリスで発表された携帯電話の電磁波に関する報告書。政府の委託で報告書をまとめたのは、イギリス・タイサイド大学病院のスチュアート院長をはじめとする研究グループ。SAR値の表示や子供の際限のない携帯電話の使用禁止などの警告を発した。

誘導電流
電界があるところでは、電子が動いて電流が流れることがあります。磁界が変化した場合も電流が流れます。これを誘導電流といいます。

周波数割当計画
「周波数割当計画」は、電波法第26条第1項の規定に基づき、免許の申請等に資するため、総務大臣が作成し公開する「割り当てることが可能である周波数の表」です。周波数割当計画には次の事項等が記載されており、無線局免許における周波数の割当可能性に関する審査基準として用いられます。  
周波数割当計画は一般に公開されています。

第5世代移動通信システム(5G)
モバイル通信システムの第5世代の略称。最大で20Gbpsの通信速度を実現する超高速、大容量通信が可能。新たに割り当てられる周波数帯は3.7GHz帯、4.5GHz帯、28GHz帯。

VCCI協会
情報処理装置等電波障害自主規制協議会(Voluntary Control Council for Interference by Information Technology Equipment)の略称。パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等の情報処理装置および電子事務用機器等から発生する電磁妨害波の自主規制を行う日本の業界団体。国内外千社以上が参加。VCCI協会の技術基準に適合する製品には VCCIマーク が表示されます。世界には同じようなヨーロッパの CEマーク(CEマーク)やアメリカの FCCマーク(FCCマーク)があります。