建物の電磁波対策|各部位の材料と施工

建物内に電磁波シールド環境(空間)を実現するには建物の各部位に適切な材料と特殊な施工が必要となる。
使用する材料のシールド性能を考慮するのはもちろんだが、材料の耐久性や不燃性などの特性に加え、取り回しやすさや加工のしやすさ、接合、張り付け等の施工性も考慮する必要がある。
電磁波対策を目的とした施工例があまり多く周知されていないこともあり、材料選びや施工方法はトライ・アンド・エラーが避けられない場合もある。特に既設の建物への施工は実際の性能が期待したほどでは無かったとういうこともしばしばあるようだ。ここでは建築物の電磁波シールドに関する情報を材料と施工性を中心に掲載します。
※電子機器や人体の電磁波シールドについては「電磁波シールドの方法と適切な材料」のページをご覧ください。
建物電磁波シールドイメージ
目次
  1. 1. 概要
    1. 1-1. 建物や部屋を電磁波シールドする目的
    2. 1-2. 対策イメージを理解する
    3. 1-3. シールド材料の性能の見方
  1. 2. 床、壁、天井の電磁波シールド
    1. 2-1. 金属箔
    2. 2-2. 金属板
    3. 2-3. 導電布
    4. 2-4. 導電塗料
  1. 3. 扉の電磁波シールド
  1. 4. 窓の電磁波シールド
    1. 4-1. 電磁波シールドガラス
    2. 4-2. 電磁波シールドフィルム
  1. 5. 換気口の電磁波シールド
  1. 6. 補助材料
    1. 6-1. ガスケット
    2. 6-2. 導電テープ
  1. 7. 終わりに(相談窓口)

1.概要

1-1. 建物や部屋を電磁波シールドする目的

外部からの電磁波を室内に入れたくない、その反対で室内の電磁波を外に出したくないなどの理由で電磁波シールドをすることとなる。
■ 外部からの電磁波を室内に入れたくない例
1.精密機器や医療機器の誤作動防止 2.室外から侵入するノイズによる通信障害 3.電磁波過敏症対策
■ 室内の電磁波を外に出したくない例
1.情報漏洩対策 2.テンペスト対策 3.室内限定の通信
IoT化が急激に進む中、あらゆるデバイスが無線通信で便利になる一方、情報漏えいや精密機器等の誤作動や通信障害などが懸念される。必要な電波と不要な電波を隔離することが理想的な環境と言える。

1-2. 対策イメージを理解する

建物や部屋全体の電磁波シールドする為には以下の図ように床、壁、天井の六面に加え、窓、扉、その他換気口等の開口部に対して対策を施さなくてはならない。電磁波は回折し、シールド材の裏側に回り込むので一面や一部分の対策をしても期待ほどの効果を得られない場合が多い。下の図のようなイメージが理想的な電磁波シールド環境となる。
建物の電磁波シールドイメージ

1-3. シールド材料の性能の見方

電磁波シールド材の性能はdB(デシベル)で表します。dBは基準値から対数で表す単位です。 デシベルを減衰率に換算すると以下の表のとおりです。
dB 減衰率
-20dB 10分の1
-40dB 100分の1
-60dB 1,000分の1
-80dB 10,000分の1

下のグラフは性能グラフの一例です。横軸が周波数、縦軸が減衰率(dB)となります。 この素材の電界シールド性能は100MHzで65dBがピーク値と言えます。 磁界のシールド性能は200MHzで20dB程度の性能があり、周波数が高くなるにつれて性能も向上して800MHzで40dB弱がピーク値となっています。
電磁波シールドグラフ例
しかしながら建物の電磁波シールドはシールド性能以外にも耐久性や不燃性や施工性なども考慮しなければなりません。 それらの諸条件をトータル的に検討して材料を選択する必要があります。

2.床・壁・天井の電磁波シールド

2-1. 金属箔

アルミ箔

一般家庭にある調理用のアルミホイルを想像してもらうと良いだろう。調理用のアルミホイルの厚みは10μm~20μm(0.01mm~0.02mm)程度だが、建材用となると0.2mm程度あるほうが破れにくいので扱いやすい。
(JIS規格ではアルミ箔は厚さ0.006mm-0.2mmのアルミニウム圧延素材と定義されている。)
アルミ箔のメリット
シールド性能が高い(30dB~80dB)、 軽量、 安価
アルミ箔のデメリット
溶接が困難、 酸化皮膜の消失による腐食
アルミ箔の耐久性
1円硬貨にも使われているように大気環境での耐久性は非常に良い。これはアルミ表面の酸化皮膜のおかげである。すなわち酸化皮膜が消失した場合は腐食が発生することになるが、通常は20年以上の耐久性は期待できる。
アルミ箔の施工性
0.2mm程度であればハサミでの裁断可能。ステープルやリベットを使用しての張り付け。材料同士の接続箇所は数センチ重ねて隙間を作らない。

鉄箔(スチールホイル、アイアンホイル)

鉄というと厚みのあるものを想像するが、箔は上記のアルミ箔と同じような形状。 圧延法によるスチールホイルと鉄イオンを含む電解液より電着、剥離するアイアンホイルがある。 どちらも防錆や腐食防止の表面処理が可能。スチールホイルは比較的厚みがあり、アイアンホイルは引裂き強度が小さく手で裂ける。 表面に銅メッキすることで高周波のシールド性能が高められる。 鉄は透磁率が高いので比較的低い周波数の磁界シールドにも期待できる。厚みは30μm~150μm(0.03mm~0.15mm)
鉄箔のメリット
シールド性能が高い(30dB~80dB)、不燃性、 シールドが難しい近接磁界についても30dB程度期待できる
鉄箔のデメリット
実績が少ない、 アルミ箔よりコストアップ
鉄箔の耐久性
上記デメリットに記載のとおり施工実績が少ないため耐久性は不明だが、20年以上は問題ないと思われる。
鉄箔の施工性
ハサミやカッターでの裁断可能。両面テープや接着剤での貼り付け。

その他の金属箔

その他にもチタン箔、ステンレス箔、銀箔、ニッケル箔、パーマロイ箔、銅箔などもありますが、コスト面を考慮するとステンレス箔、鉄箔、銅箔が、性能面では銀箔やパーマロイ箔が優れる。

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2-2. 金属板

上記の金属箔は厚みがマイクロ単位なのに対して「金属板」はミリ単位と考えると分かりやすい。厚みが増せばシールド性能はアップするが、重量が問題になる場合もある。 床面の施工は容易でも壁や天井への金属板を貼り付ける方法はビス止め等でしっかりと固定しなければならない。

鋼板

鉄を主成分とした合金で、JIS企画により以下のように決められている薄板(厚さ3mm未満)、中板(厚さ3mm~6mm)、厚板(6mm~150mm)、極厚板(厚さ150mm以上)の4種類に分類される。電磁波シールドの材料として使われるのは薄板が中心となるが、高シールドが必要な場合は中板が使われるケースもある。
鋼板のメリット
シールド性能が高い(80dB以上)、 不燃
鋼板のデメリット
 建築重量制限に注意、 取り扱いに難
鋼板の耐久性
20年以上
鋼板の施工性
サイズ調整には溶断が必要。接合は溶接。突き合わせる場合は隙間の処理が必要。張り付けはビス止め。

その他の金属板

床、壁、天井に用いられる金属板としては鋼板以外にはアルミ板、銅板などがあるが、重量がポイントになる場合の選択肢はアルミ板となる。
アルミと高透磁率ナノ結晶磁性材を多層化させた新素材「EMSパネル」は0.7mm厚の超軽量素材ながら20kHz~の低周波に60dB対応する。
金属の種類 比重
アルミ 約2.7
約7.8
約8.5

2-3. 導電布

導電布とは有機繊維の表面に薄い金属をめっきした織物で、金属繊維やめっき繊維という場合もある。導電性がありながら繊維の持つ軽さ、薄さ、柔軟性を併せ持っているので折り曲げやねじる箇所にもフィットするフレキシブル性を有する。
厚みは100μm~300μm(0.1mm~0.3mm)程度で重量は50~150g/m2と軽量。はさみやカッターナイフで裁断可能。 めっきされている金属は銅、ニッケル、銀などがある。銀めっきは電磁波シールド性能に優れるが、価格面と耐久性ではニッケルめっきのほうが優れいている。詳細は下記リンク先にて。

ニッケルや銅をめっきした布の例

銅やニッケルをめっきした織物で、5m程度からの購入可能

電磁波シールドメッシュ

銀をめっきした糸をメッシュ状に編んだ生地。伸縮性に優れる。1mから購入可能
導電布のメリット
シールド性能が比較的高い(30~70dB程度)、 折り曲げ可、複雑な形状にもフィット、 軽量
導電布のデメリット
金属板に比べるとシールド性能は若干低くなる
導電布の耐久性
空気に触れない環境であれば20年以上
導電布の施工性
ハサミ、カッターナイフで自在に裁断可能。ステープルや接着剤を使用しての張り付け。材料同士の接続箇所は数センチ重ねて隙間を作らない。

2-4. 導電塗料

導電塗料は電子機器のプラスチック筐体の電磁波シールド用に使用されるケースが多いが、建物の電磁波シールドにも転用可能。形状を問わずに導電性を持たすことが出来る。 導電塗料は銀や銅、ニッケルなどの金属微粉末を合成樹脂バインダーに配合しており、専用シンナーで塗装しやすい粘度に調整して塗布する。
銀フィラーの導電塗料は非常に高い導電性能があり電磁波シールド性能に優れるが非常に高価である。銀・銅やニッケルをフィラーにしたタイプは比較的安価である。

導電塗料ドータイトシリーズ

導電塗料のメリット
シールド性能が高い(40~80dB程度)、 塗料なので複雑な形状箇所にも対応
導電塗料のデメリット
金属板に比べると性能は若干低くなる
導電塗料の耐久性
下地処理や材質、環境により差が出るが10年以上
導電塗料の施工性
室温3時間程度で硬化。スプレーガンの使用が施工性に優れるが、ローラーや刷毛塗りも可能。塗装面の脱脂処理。作業中の換気。火気厳禁。

3.扉の電磁波シールド

扉やドアの面部分は基本的には上記の床、壁、天井と同じ材料を用いる。鉄扉(スチールドア)であれば面対策は不要となるが、扉と扉枠との接触部分には導電性のガスケット等の補助材料を使用して隙間対策をするほうが望ましい。※ガスケット等の補助材料については「6. 補助材料」をご覧ください。
「電磁波シールドドア」で検索すると測定機関で実証試験を経た高性能なシールドドア販売している企業もあるが、 電波暗室での使用など本格的な物になるのでハイレベルなシールド性能が必要で無い場合は既設のドアへの対策で十分だと思われる。

4.窓の電磁波シールド

ガラスそのものに電磁波シールド性能がある電磁波シールドガラスを採用するか、既存の窓ガラスに電磁波シールド機能のあるウィンドウフィルムを貼り付けるかになる。 いずれも30dB程度の性能となるのでさらに高い性能を望む場合は、導電性の布をカーテンに採用するなどの合わせ技が必要となる。

4-1. 電磁波シールドガラス

ガラスとガラスの間に導電性金属メッシュを挟み込んだ合わせガラスタイプとガラスの表面に金属皮膜を蒸着させたコーティングタイプとがある。

4-2. 電磁波シールドフィルム

金属蒸着ポリエステル層によって電磁波をシールドする窓ガラス専用フィルム。中性洗剤を数滴垂らした水溶液で窓ガラスに貼り付ける。ガラス面を十分に綺麗にしてから作業する。ふたりで作業すれば初心者でも比較的簡単にできる。貼付け後はスキージーでを使って中心から外に向かって気泡を押し出して圧着する。

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5.換気口の電磁波シールド

換気口の電磁波シールド材は金網状のメッシュタイプと六角形のハニカムタイプがある。材質はアルミニウムが多いが、低周波の磁界シールドも必要な場合はパーマロイや鉄系の物のほうが良い。
安価に済ませたい場合はメッシュ状の導電繊維や金網等でも代用できる。

6.補助材料

6-1. ガスケット

シールディングガスケット
シールディングガスケット

主に扉やドアの開閉部の周囲の隙間対策に使われる。復元弾性力性に優れた導電性のポリウレタンフォームを利用して開口部等の隙間を埋めることにより電磁波ノイズの漏れと侵入を防止する。 扉の開閉を妨げない程度の弾力性と復元性が長期に安定していること。摩耗による導電性の劣化の無いことが重要。

6-2. 導電テープ

導電性銅箔エンボステープ
銅箔テープ(スリーエムジャパン)
導電性銅箔エンボステープ
導電布テープ(スリーエムジャパン)

銅やニッケル等の金属めっきを施した布(導電布)や銅箔やアルミ箔等の金属箔をテープ状にしたもので、目地などの隙間対策は導電テープを使用する。 金属箔タイプと導電布タイプがあるが、金属箔は導電布に比較すると柔軟性に欠けるので剥がれやすいという欠点がある。剥がれてしまった場合は導電性粘着剤を使用しているため通常の接着剤での貼り直しは良くない。

7.終わりに

以上、駆け足でひと通り説明致しましたが、より詳しくお知りになりたい方は各種電磁波シールド材のメーカーや販売店にご確認ください。
また、弊社の「お問い合わせフォーム」からも無料相談を受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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